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SPECIAL INTERVIEW WITH RICHARD LIU
<DSPTCH>

デザイナーのリチャード・リウによって、2010年にアメリカ・サンフランシスコで始動したDSPTCH(ディスピッチ)。現在はミニマルで機能的なデザインのバッグやPCケース、カメラストラップなどを展開中。使い続けることで魅力が増すプロダクトを生み出すリチャードに、これまでとこれからのDSPTCHについて聞いてみた。

「時代にフィットする機能的なプロダクトを提供したい」

— まずDSPTCHを始めた経緯をお伺いできますでしょうか?

リチャード・リウ(以下R) : 「2000年当初、自分の必要とするカメラストラップ(その頃主流になってきていたミラーレスサイズ用)がマーケットになかったので、自分で作ろうと思ったのがきっかけです。最初の2年間はカメラストラップのみを作っていて、会社を作るつもりはなかったのですが、徐々に売り上げがアップしていったので、2010年に会社を立ち上げました」

— DSPTCHのブランドコンセプトは?

R : 「時代が変化していくなかで、常に新しいジェネレーションにハイクオリティと機能性を備えた新しいタイプのプロダクトを提供することがコンセプトです」

— カメラストラップ以外にバッグやPCケースなどのプロダクトを製作することになった理由は?

R : 「カメラストラップの売上が伸びてきたころ、アメリカの大手カメラ小売店から卸の話をもらいました。かなり大きなビジネスチャンスでしたが、カメラ業界に進出することでDSPTCHのデザインの可能性を狭めてしまう恐れを感じ、その話はお断りしました。私にはカメラ業界で名を馳せるよりも、もっと大きなマーケットでDSPTCHの存在価値を高めたいという野望があったからです。これを機に、もともとバッグに興味があったこともあり、カメラストラップで培ったデザインやクオリティの技術を活かせることから、バッグのデザインをするようになったのです。ただし、カメラストラップから始まったブランドという事実は、ブランドの基盤となっているので、そこは今でも大切に捉えています」

「アメリカ製であり続けることには意味があります」

━ DSPTCHのプロダクトについて。特徴やこだわりなどを教えてください

R : 「ハイクオリティと機能性、仕事でも週末でも毎日使えるデザイン。そして丈夫であり、革新的、商品主義といったところでしょうか。私の考える革新的であるということは、全く新しいものを作出すということであり、過去の価値観やアイデアの新しいアプローチを発見するということでもあります。一番大事なことはクオリティです。求められる以上のクオリティを提供したい。クオリティを維持・向上させるためにデザインを生み出すために、私は自社のQCチーム、カスタマーサービスのスタッフたちと毎日コミュニケーションを取り、クオリティの向上を意識し続けています」

— Made in USAについてのこだわりは?

R : 「DSPTCHがアメリカ生産にこだわる理由は、ハイクオリティと細かいデザイン指示ができることに尽きます。アメリカ製が必ずしもハイクオリティというわけではなく、自分がすべてをコントロールできる位置に工場があることが重要なのです。デザイン、QCチーム、カスタマーサービス、工場が近いところ(場所+立場)で働くことにより、クオリティ、機能性、デザインにおいて、自分の納得のいくものが作れていると実感しています」

━ いわゆるアメリカンブランドといえば、ワークやアウトドアのイメージが色濃いですが、革新を求めることでDSPTCHのような独自の世界観を持ったプロダクトができたのでしょうか?

R : 「どうでしょう。DSPTCHがアメリカ生産にこだわるのは上記の理由です。当然、クオリティや機能性を求めるために、アウトドア用の素材を使用することもあります。そして昨今、多くのバッグブランドがライフスタイル提案型ブランドへと移行していることも事実。我々はそれらとは異なる存在であり続けたいのです。DSPTCHはシティ・ユースがメインですが、毎日使える商品というのがコンセプトなので、キャリーギア(ものを持ち運ぶもの)にフォーカスを置き、今後もそのカテゴリーで商品を展開していきます」

「日本で成功しなければ、他の国でも成功しません」

━ ではDSPTCHらしさとは何でしょうか?

R : 「機能性という面では、すべてのデザインに意味があり、消費者のニーズを満たすものであり、デザインから見ると、幅広い消費者の物欲を高める要素を具体化するということでしょうか」

━ デザインのアイデアはどこから得ているでしょうか?

R : 「街行く人々を観察し、仕事にはどんなバッグを、旅行にはどんなバッグを人々が求めているのかを調査し、アイデアを得ています。たとえば、今サンフランシスコでは若者の働き方は多様化しています。オフィスに行かなくてもパソコン一つあればカフェで仕事ができる。そんな人たちのために何が必要か? などを考えてデザインします。バッグを作り始めたころは、マーケットリサーチなどをしてバッグの基盤となるデザインの参考にはしていましたが、1年、2年ほど経験を積んだ後は、デザインそのものというよりは、パーツなどをピンポイントで見る程度。むしろアパレルやスニーカーなどからインスピレーションを受けています。また、ミリタリーアイテムにも強い興味があるので、第一次世界大戦やベトナム戦争時のトラディショナルなミリタリーデザインと新しい機能やデザインをミックスさせたものを作りたいと考えています」

━ 現在のDSPTCHの展開について教えてください

R : 「サンフランシスコで10店舗にて展開(内1店舗は自社小売店)しています。アメリカ国内だと20店舗、世界(12か国)では50店舗程度展開しています」

━ DSPTCHにとって日本マーケットとはどのような位置づけなのでしょうか?

R : 「非常に重要なマーケットであると認識しています。JAPANマーケットでの成功なくして他国では成功できない。日本の消費者は一人ひとりが洗練されており、それぞれがどんなブランド、どんな商品が欲しいかを明確に理解しています。ゆえにクオリティや機能性に対しての理解とニーズがあるので、DSPTCHの商品との相性は非常に良いと考えています」

━ 最後にブランド全体の今後の展望をお聞かせください

R : 「まず構想に3年かけたカメラバッグをリリースします。あと既存コレクションのカラー展開も拡大する予定です。今後、DSPTCHの可能性をより広げていくために、ラグジュアリーなレザーバックパック、レディスバッグ、マザーズバッグなどの可能性を現在探っています。この辺は個人的にも楽しみなプロジェクトなので、今から完成するのが待ち遠しいですね」

清潔感あふれるサンフランシスコの直営店。この店にPRODISMも並んでいる ©DSPTCH

RICHARD LIU
DSPTCHクリエイティブディレクター兼デザイナー。1983年マイアミ生まれ。幼少期からアートやデザインが好きで、趣味でアートをやっていたが、会計士である父親のすすめで、大学はビジネスマネージメントを専攻。大学で学んだことをいかし、卒業後はオンラインマーケティングやウェブデザインなど企業のコンサルを行う。マーケティング職に従事する傍ら、DSPTCHのモノづくりを始め、2年間ほど二足のわらじ生活を経て、2010年DSPTCHを会社として立ち上げた。
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林五 プレスルーム
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